岩手山
2,039m   (2006/08/16)
コースタイム: 馬返登山口駐車場(4:56) ─→ 馬返登山口(5:04) ─→ (6:10)二合目 ─→ (6:33)三合目 ─→ (6:52)四合目 →

  ─→ (7:13)五合目 ─→ (8:25)七合目(8:35) ─→ (8:40)八合目小屋(8:54) ─→ (9:34)山頂(9:45) →

  ─→ (10:12)八合目小屋(10:21) ─→ (12:13)登山口

 ※各ポイントの左時刻は到着時刻、右時刻は出発時刻を表す
同行者:なし(単独行)
今日ばっかりは気分が乗らないが、先送りするのもシャクに触る、大いなるジレンマである。馬返登山口の駐車場に来て迷いに 迷った。
関東地方の沖合いに台風が近付いていて、ここ岩手県も天候は甚だ芳しくない。今いる地点から、上空200mぐらいまでは森の木々 が見えるが、そこから上はスッポリ厚い雲に包まれている。山頂付近ではかなりの雨や風が避けられないだろう。後から来て隣に 止まったワンボックスカーの皆さんも同じように迷っているようで、一向に車から出てくる様子がない。
ここで中止してしまうと、再度1200kmも足を運ぶことになる。意を決して登ることにして身支度を始めた。自称・晴れ男の看板は ここに捨てて帰ることにする。
駐車場を出発する頃になって、隣のワンボックスの皆さんも動き始めた。挨拶を交わしつつよく観察すると、群馬ナンバーの4人組 のパーティだ。この後、暫くしてこの方々と行動を共にすることになる。
駐車場から3-4分歩くと登山口に着く。ここで入山届けを記入して投函。
登山路はいきなり鬱蒼とした深い森に入る。晴れていれば日陰の快適な歩行になるのだろうが、この天気では薄暗くて、心なしか 空気も重く感じられる。
さすがに人気の高い山だけあって、コースはきれいに踏み固められていて、歩きやすい。30分ほど歩くと濃いガスの中に入った。 視界は20mほどか。旧道との分岐を過ぎる辺りから、ところどころ木々の切れ間が現れるが、風景はおろか、樹高の高い木では、天辺 も見えない有様だ。
更に高度を上げ、三合目を過ぎた辺りではガスは次第に大粒となり、霧雨状となった。この霧雨が葉っぱに付着したのか、或いは 昨夜のうちに降った雨なのかよく分からないが、風が吹くたびに頭上から水滴が落ちだした。チョイ休みの場合も、場所を選ばないと ふるい落とされる水滴でびしょ濡れになりかねない。
四合目の直前辺りで、駐車場で隣り合わせた群馬の4人組が追いついて来た。すごいスタミナで、とても付いて行けず、あっさり置いて 行かれた。
この頃になると霧状の雨は次第に粒が大きくなり、さっきまで横に流れていたのが縦に落ちるようになった。ブナの木の場合、葉で 受け止めた雨滴は枝に伝わり、幹に集まって樹皮を伝って地上に落ちる、というようなことを聞いたことがある。コース脇の、雪の重み か何かで引き倒されて、斜めになったまま成長を続けるブナの若木で、この現象を目の当たりにして、素直に納得させられた。
五合目辺りでは背の高い樹木は疎らになり、ダケカンバと縦に伸び気味のハイマツが主流となる。コースは斜度を緩めて巻き気味に 進むようになる。 風除けの樹木がなくなったためか、高度が上がったためか、風が急に強くなる。メガネは拭いても拭いてもすぐに水滴で曇る。しかも 内外の両面ともだ。堪らずメガネは外すことにする。 この頃には、雨は本降りになり、ヤセ我慢も限界に達して雨具を取り出すに至った。新調して2年弱、初めて袖を通すことになったわけ だが、裏返せばこれまでのツキに感謝しなくては....。
ガスで見通しが全く利かない、緩やかな草原コースを辿っていると、単独行の下山者に出会った。立ち話で上の様子を尋ねると、頂上 は猛烈な風で怖くて山頂まで行けなかったという。想像以上の荒れようだ。
下山者を見送り更に進むと、ガスの中に巨大な山荘のシルエットが現れ、八合目避難小屋に着く。近付いて改めてその大きさを実感する。
先ほど追い越して行った群馬の4人組の1人が屋外でタバコを吸っていた。このグループも先ほどの下山者の話を聞いたようで、進むか 下るか迷っていると言う。こちらもややビビリぎみであり、様子見と休憩を兼ねて、勝手にグループに加わり雑談を交わす。
10分余りの雑談の結論は、折角ここまで来たのだから行ける所まで行ってみようということになった。できるだけ身軽に、ということで ザックは小屋に置かせて戴くことにした。玄関脇の空きスペースに置かせて貰うよう依頼すると、親切に奥の保管場まで運んでくれた。
持ち物はストックなど最小限の留めて、5人で山頂に向け小屋を後にした。
八合目避難小屋を出て5分ほど歩いたところで、左前方のガスの中に再び大きな黒い影が見えて来た。「この辺に もう一つ避難小屋があるらしいが、こっちも大きいね〜」などと感心しながら通り過ぎたが、帰りによくよく見れば ただの岩だった。
10分ほどで草地のなだらかなコースは終わり、火山礫の急な登りになる。皆そこそこ消耗しており、ピッチは急速に 落ち、休み休みのの行進となる。20分余りかかって火口外輪に到達。方向の定まらない猛烈な風が待ち受けていた。 雨粒は真横から、時に下から降って来る。狭い稜線上のコースを、風に吹き倒されないよう姿勢を低くして進むこと 10数分、念願の山頂に到着した。
気まぐれに変わる風向を気にしながら登頂記念の撮影を試みるが、すぐにレンズに雨粒がつき、まともな絵にならな い。何枚かトライしているうちに、レンズカバーの中にまで水滴が入り、ついには拭き取りさえもできなくなって しまった。左は今回の山行ツアーで最後の写真である。
ガスで周囲は何も見えないし、顔を上げているのが辛いほど、雨粒が襲って来る。山頂の様子や風景を記憶に留める こともなく、10分足らずの滞在で山頂を後にした。
以下、写真はありません。 登りの際には気付かずに通り過ぎたが、コース脇の斜面にはコマクサが沢山咲いているではないか。こんなお宝 ものの風景を見落としてしまうとは...どえらいボーンヘッドだった。が、今はカメラは使い物にならないし、 よしんば使えたとしても風と雨で最悪の撮影コンディションではある。この次、もしこの山に来るとしたら、是非 とも同じ時期に天候を選り好みしてトライしたい。
火山礫の道を下り、草地を駆け抜けるように(?)下って八合目避難小屋へ。結局この小屋を出て、ここに戻るまで、 他の登山者には1人も出会わなかった。
避難小屋では、管理人さんはこの時も親切に預けていたザックを取り出してくれた。改めてこの場で感謝の気持ち を表わしたい。
避難小屋で10分ほど過ごして、あたふたと下山を開始した。この時点では、雨は相変わらずの大降りだが、風は少し 弱くなってきたようだ。群馬4人衆と共に、ハイペースで下りのコースを辿る。
高度差100mを10分ほどのペースで駆け下る。五合目ぐらいまで下ると、次第に雨の降り方は弱くなり、反比例する かのように雨具が暑苦しさを増して来る。雨粒がなくなるのを待ちきれず、一同堪らず雨具を脱ぐことに。この間、 合わせて10分ほど休憩をとる。
幾分スタミナを回復したところで、再び歩き始める。暑さを感じない分、ペースは更に上がる。結局、八合目避難 小屋から馬返登山口までの高度差1100m余りを1時間50分ほど(うち10分休憩)で下ったことになる。中高年5人の 仕業としては上出来だったと思う。
登山口付近は雲も切れ、夏の明るい日が射している。時間も丁度いい頃合であり、一同揃って昼食をとることに。 すぐ近くまで『鬼又清水』が引かれていて、ここでは炊事・洗濯・汗流しで水に不自由することはない。冷たく おいしい水だった。
群馬4人衆はこの後、北上して秋田駒に向かうという。私はというと、この後近くの温泉で汗を流して、淡路島の帰ら なくてならない。何しろ明日朝には友人の引越しの助っ人の大仕事が待っているのだから。
4人衆には、同行して貰ったお陰で山頂にアタックできたことに、丁重にお礼を気持ちを伝え、以後の互いの無事を 祈りながらこの山を後にした。気持ちのいい山行だった。