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夕方、"朝日鉱泉ナチュラリストの家"に入り、オーナーから朝日岳アタックの要点を教わった。その結果、周回の順路を逆にして、
中ツリコースから頂上を目指し、時間に余裕があれば鳥倉コース、なければ中ツリ経由下山に決め、その日は早めに眠りに就いた。
翌朝は4時を少し回った頃に起床し、宿で用意してもらった弁当で朝食を済ませ、装備を整えて出発したのは4:50。
いくつかの吊橋を渡り、小さな沢を渡渉しながら、朝日川を遡上するようにコースを辿る。沢に沿って切られた緩やかなコースは
スタミナの消耗も少なく、サクサクと距離は捗るが、高度計は一向に上昇しない。
コース脇の夏の草花が気になるが、これから先の長丁場を思うと、カメラを取り出す余裕はない。登りの道中で撮影したのは、
ソバナ だけで終わってしまった。
少し勿体なかったか。
コース中間点の出合に6:30着。
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ここで朝日俣沢、黒俣沢など大きな沢が合流する。コースはここからが本番であり、長く険しい急登が延々と続く。
コース断面図 から分かる通り、出合から
いきなり急登が控えている。
コースは狭い尾根に、まるで最短距離を意識したかのように、躊躇なく真っ直ぐに刻まれている。急斜面と相まって、これでもか!!
とばかりに歩行者のスタミナを搾り取る。
時折途切れる森の切れ間から仰ぐ山頂方向は、ガスに覆われたままだ。振り返って見る朝日鉱泉方向はかろうじて見通しが利き、
山小屋の屋根が、濃い緑の中で白く光って見える。
途中、"長命水"という水場があると聞かされていたが、コースから少々外れて沢に降りなくてはならない所だったので、今回は水補給
は見送った。手持ちの飲料水に不安はないし、この先何ヶ所か水場はあるはずだ。
無風の森で大汗をかきながら這いずること4時間余り、やっとのことで山頂に到着。
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頂上には、他のコースから登って来た、先着の8名ほどの中高年パーティーが休憩していた。シャッターを頼み頼まれながら記念撮影
を済ませ、少し早いが昼食をとることにする。
山頂の立派で真新しい標柱には、表裏両面に山頂を示す文言が刻まれていて、光線の方向次第で使い分ければ、逆光による不出来な
写真を避けられる。配慮の行き届いた措置である。それでもガスだけはどうしようもなく、左画像の通り遠望は全く利かない。
山頂には避暑のため押し寄せるという、多数のトンボが飛び交っている。一方、こちら は食事中の私・暇人の膝に飛んできて遊ぶ、体長1.5cmほどのコガネムシのような
カミキリムシのような、正体不明の昆虫。
山頂では足元の景観と昆虫たちの姿を眺めただけで、25分弱を過ごして次を目指して出発。日没までには8時間以上あり、鳥倉
コースを辿ることにした。
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7分ほどで大朝日小屋に到着。分譲住宅風のきれいな造りだが、さすがに豪雪地帯の避難小屋だけに、きちんと2階にも出入用のドア
を備えている。少しだけ中を覗いてみたが、就寝場所にはクッションが敷かれていて、他の避難小屋と比べると充実している様子で
あった。
小屋周辺の緩斜面の草原には、ツリガネニンジン、クルマユリ、タテヤマリンドウ、
マツムシソウなどたくさんの草花が咲いて、つかの間のお花畑になっている。遠くに目をやると、北西方向の中岳直下の斜面には、
まだ大きな雪渓が残っている。ここではまとまった休憩は省略して、次の小朝日岳を目指す。
大朝日小屋からはなだらかに下降する尾根歩きである。この尾根筋に出て、すれ違う登山者の数は急に増えた。立ち話のついでに
コースを訊ねると、ほとんどが古寺鉱泉からだということだった。
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コース脇の草花は、種類の点では小屋周辺と大きな違いはなく、足を止めさせるほどの意欲は涌かない。唯一新たな発見としては、
すでに果包に姿を変えたヒメサユリが散見されたことくらいである。この頃になって、やっと山頂のガスが切れ、山塊の全体像が見渡せるようになった。
小朝日岳へは古寺方面への巻道と分岐して150mほどの急斜面を登り返すことになる。分岐の標柱脇に腰を下ろして休憩をとって
いると、小寺方面から2人、小朝日方面から1人の登山者がやって来た。コースの泥濘や無風を愚痴りながらも、みなさん大朝日に向けて
意欲的に歩いて行った。
然らば自分も・・・と腰を上げるが、さすがに長丁場を歩き続けて来た疲労が溜まっていて、頭で思うように脚は動いてくれない。
足腰を騙し騙ししながら、少し歩いては暫し休む寸取虫歩行を重ねて、どうにか小朝日岳に辿り着いた。
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まとまった登り坂はここが最後であり、この後は小さなアップダウンを別にすれば、降るだけの筈である。峠を越したことへの安堵
もあって少しだけ長めの小休止。ここにも大量のトンボ(アキアカネ)が飛来している。腕を伸ばして案山子のようにじっとして
いると、指先に止まって休むのんびり屋
もある。
さ〜て、歩行再開。ゆるい降り勾配の尾根筋を辿って、50分ほどで鳥原山へ到着。ここでの休憩は短めに抑えて、次の鳥原小屋を
目指す。この頃になって、頭上に青空が広がって来た。爽快な尾根のウォーキングである。
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鳥原小屋に近づくにつれ、コース脇は湿原の風情が濃くなる。木道も敷設されて歩き易さは格段に向上する。
右手の小高い尾根の上に小屋の屋根が見え始め、程なく水場に到着。"冷た〜!"というほどの水温ではないが、猛暑の山道を歩き
続けて来た身には、十分に御馳走と呼べる冷え具合である。腹を満たし、腕や顔をすすいで、沢の涼やかな日陰で小休止。
この後、歩行を再開するが、下るでもなく登るでもないような尾根の道が長々と続く。周囲は広葉樹と針葉樹の混成林となり、
景色は全く見通すことのできない退屈なコースではある。それでも、30分近くも歩くと、下りの勾配は少しずつ深まり、やがて大きく
右に進路を変えたところで金山沢出合に到着する。
ひんやりした日陰の沢で10分の小休止。
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金山沢を出ると一旦50mほどの斜面を登り返さなくてはならないが、足腰のコンディションは、たかが50m、されど50mというところに
追い込まれている。寸取虫歩行を重ねて、なんとかここの登りを乗り切る。
再び延々と続く尾根の道が始まる。今度は小さなアップダウンを、いつ果てるともなく繰り返す。繰り返す。・・・・・。
この状態が30分ほど続き、いい加減に嫌気がさし始める頃、やっと本格的な下り勾配に差し掛かる。こうなると朝日川は目の前である。
次第に沢の水音が大きくなるのを感じながら、歩行ピッチは上がって鳥原分岐へ。この後、15分後には朝日鉱泉の山小屋に到着。
ツ・カ・レ・タ・〜・!
昨日、ここに来た時と同じように、この小屋の飼猫・ゴン
が駆け寄って来て足元にじゃれ付いた後、我が愛車のバンパー下に陣取って、装備を解くこちらをじっと見守っている。
癒されるひと時だった。
明日は吾妻山だが、他の宿を探す時間もないので、今夜はここに泊めて貰うことにする。
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