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目論みより出発時間は遅れて、6:03に大日杉登山口を出発。早々から険しい登りの道を大汗を掻きながら進む。
大日杉付近は杉の大木が林立するが、程なくブナを主体とする広葉樹の林相に変わる。コース脇の草むらにはワラビ、ゼンマイなど
馴染みの山菜が姿を見せる。どれも良く肥えていて、中には鉛筆サイズの太さのものも見られる。
鬱蒼とした原生林に切られた登山路は、周辺の視界は全く利かない。勢い視線は足元に落ちることになるが、これが思わぬ幸運を
呼び込むこととなった。1時間余り歩いた頃、積み重なったブナの落葉の中に
ギンリョウソウを発見。
図鑑やWebでは何度も目にしていたが、まともな現物を目にするのは初めてである。興奮しながらシャッターを押し続け、かなりの
時間を消費してしまった。
ガイドブックなどでは、滝切合の近くに"長之助清水"があるとのことだが、コース両脇に随分注意しながら歩いたが、結局それ
らしいものも、案内板も見出せなかった。
たまに樹間の切れ目から対岸の森や稜線を望む意外、ほとんど視界が開けることのない、やや退屈なコースを黙々と歩き続けること
3時間余り、やっと地蔵岳に到着。
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地蔵岳から切合小屋までは大小のアップダウンを繰り返しながらの稜線歩きとなる。右手に視界が開ければ、雄大な飯豊山が見渡
せる筈だが、今は厚いガスに覆われて勇姿を見ることはできない。
地蔵岳を過ぎる辺りから、満開のカタクリがコース脇を埋めるようになる。カタクリが途切れると、次にシラネアオイが目立ち始め、
やがて群生地に入る。この花に逢うために、この時期を選び、800kmを駆け抜けて来たわけである。先の長い登山のことを忘れて、
しばしシャッターを押し続ける。
どれくらい時間を費やしたか、ふと我に返って登山モードに切替える。コース沿いには
ハクサンチドリやイワイチョウ、イワカガミ
などが誘惑の手招きをするが、予定は押しており本格的な撮影はできない。それでも美女たちの誘惑には勝てず、コンデジ(注:
コンパクト・デジカメ)でお手軽撮影をしながら歩くことに。
コースは種蒔山直下で一旦沢に下り、切合小屋に向けショートカットするが、この部分はほぼ全面雪渓歩きとなる。ところどころ
クレパス状の深い亀裂が入っていて、少々ビビリながら歩く。
こうした経緯で、切合小屋に着いたのは予定より1時間ほど遅れて、12:30になっていた。地蔵岳からここまでの尾根沿いのコースは、
地形図を元に事前に予想したより、かなりハードだった。甘い計画だった訳で、次は確り織り込むようにしよう。
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切合小屋で、昼食を兼ねてやや長めの休憩の後、山頂を目指して出発。この先も雪渓歩きが続く。姥権現の手前の小ピークまでは
コースは殆ど雪の下で、急斜面あり緩斜面ありの雪渓を大汗をかきながら歩く。ここでも雪渓上には深い亀裂が散見され、近くを
通過する時は、忍び足モードで恐る恐るやり過ごす。
姥権現の直前の1900mほどの小ピーク付近に至ってやっと雪渓は終わる。この小ピークを過ぎ、70〜80mの急斜面を下った先の
鞍部が姥権現である。今下ってきた小ピークを振り返るとやたらと聳えて見える。下山の際の登り返しがさぞ苦しかろうと思い
やられる。
この辺まで来ると背の高い樹木はない。潅木と草地が広がるだけだが、尾根筋を除くと大部分は雪の下である。露出した草むら
には、数は少ないがシラネアオイがちらほら咲いている。
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姥権現を過ぎると、ひたすら急な登り道が続く。尾根筋に刻まれたルートに雪はなく歩き易いが、如何せん長距離を歩いて来て疲労
は溜まっている。ペースはガタ落ちで、休み休みの歩行になる。コースの先を見ても、辿ってきた後方を振り返っても、登山者らしき
ものは何一つ見当たらない。どうやら今日は飯豊山貸切登山のようである。
姥権現から80分ほどかかって、やっと飯豊山神社に到着。もうこの先に大きな起伏はない。神社の脇にザックを置き、カメラと小型
三脚だけの軽装で飯豊本山を目指す。なだらかな尾根を辿り、15:27山頂に到着。
眼前に真っ白に雪を纏った大日岳が聳えている。ここより少し標高は高そうだ。遠くは少し霞んだ状態で、はっきり認識はできないが
朝日岳らしき影も見える。
ここでセルフで登頂記念の撮影を済ませ、周辺の風景を何枚かカメラに収めて(それも山の露と消えたわけだが・・・)、10分ほど滞在
の後、そそくさと下山開始。
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飯豊山神社でザックを回収し、早足でコースを逆に辿る。それでも姥権現からの登り返しと、その後の雪渓歩きでは予想通り難渋し、
疲労困憊して切合小屋に到着。この時点で17:14。
今から下山すれば、1時間半は暗闇の中を歩くことになる。ライトや予備の電池はあるが、闇夜の山歩きは不安が多い。
一方、不測の事態に備えて5℃仕様のシュラフや防寒着、丸1日分の非常食は携行しており、少々冷え込んでも凍死の不安はない。
ということで、この避難小屋に泊めて貰うことにする。
日が落ちて、スッポリ闇に包まれて8時前に就寝。Z・Z・Z
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板の間にシュラフを置いただけで寝たため、床との接触面の体が痛くて、20〜30分置きに目が覚めてしまう。その度に寝返りを打って
寝直しを続けたが、窓の外が白み始めたところでこれを打ち切り、起き上がった。ゆっくり身支度を整え、非常食で朝食を済ませて、
4時ちょうどに切合小屋を出発。
薄明るい中で、早々に雪渓歩き。昨日と違い、今は硬く閉まっている。踏み抜きの心配はないが、足を滑らしたらどこまで行くか、
というのが心配である。しかし何事もなく、10分ほどでこれをクリアし尾根筋に出る。ここからは、今度は朝露の猛攻に逢う。
コース脇の草や潅木は、支え切れないほどの朝露を蓄えて、コース上に頭を垂れて通行人を待ち受けている。スパッツは付けているが
気休めに過ぎず、腿から下はずぶ濡れになりながら、尾根の道を下る。
地蔵岳への最後の登り返しでは顎が出掛けたものの、何とかこなして6:14地蔵岳へ。小休止の後、大日杉に向け出発。5分ほど下った
ところで樹林が途切れ、視界がパッと開けるところがあった。後を振り返ると、飯豊本山から切合小屋に至る稜線、そして雪渓の
ショートカットルートから尾根伝いに
辿って来たコースが一望で見渡せる。壮観だ。
この後、1分も歩くと樹林帯に入り、再び山容を仰ぎ見ることはなかった。
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登りの際には見つけられなかった"長之助清水"に再度注意しながら歩いたが、やはり見つけられずに通り過ぎたようだ。今は飲料水
を事欠く状態ではないが、いざと言う時のために案内板などがあれば、助かる登山者も多いと思うのだが...。
それはそれとして、この後登山口まで視界を閉ざされたまま、樹林をを辿ること1時間半余り、これと言ったエピソードもなく歩を進めて
7:55無事下山した。結局この山では、ここ大日杉登山口を出発して戻りつくまで、誰にも逢わなかった。これは2004年12月に阿蘇山で
経験して以来、久し振りの珍事だった。
下山して振り返ってみると、日帰りには不向きなストロークの長い山である。日帰りに拘るとすれば、今回より少なくとも1時間半は
早発ちが必須だし、山野草撮影などは相当圧縮して、歩きに専念することが必要である。
個人的には、憧れの初夏の山野草達に逢えたし、有意義な登山だった。しんどい山ではあるが、いつか又来ることになると思う。
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