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中岳避難小屋は登山シーズン中は管理人が常駐しており、レトルトの範囲内で食事も提供されている。照明は
ランプのみというレトロな雰囲気の溢れる、3000m超に位置する山小屋である。
この日この小屋の客は私1人だけ。山が闇に包まれるまでにカップ麺で腹を満たし、暫く管理人さんと最近の山の様子や世間話を
して過ごしたが、日中の疲労もあって8時前には床に就いた。この頃から風が吹き始め、夜が更けるにつれ小屋は騒々しさを増し
始めた。
体も頭もヘロヘロに疲れているのだが、この風による切れ目のない轟音が耳に憑いて、全く眠れない。結局、ウトウトと意識が
消えたのは、併せても30分もないという惨憺たる一夜となった。夜が明けても足腰の疲労感は殆ど取れていなかった。
深夜することもないので、時間潰しに騒音を手持ちのレコーダに録音したものを、下記のプレーヤに貼り付けてみた。
スピーカが繋がっている方は、Playボタン( )を押して体感頂きたい。
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寝具をたたんで外に出てみると、強風は相変わらずだが東の空は朝焼けしている。悪沢岳や中岳、前岳はきれいに
見えているが、やや離れた赤石岳は雲の中である。
管理人さんの話では、昨日も夜は強風で荒れたが、朝8時頃には止んだとか。かすかな望みだが、好転を期待して装備を整え、
目と鼻の先の中岳を目指す。6:13 小屋出発。
中岳まで所要時間3分。
かじかむ手でカメラ操作などしているうちに、あっという間に5分経過。
次の前岳まで所要時間7分。
前岳の山頂付近は崩落が激しく、既に山頂標柱の基礎部分は1/3ほどは空中に浮いている。いつまでこの状態で立っていられるか・・・。
ピークや稜線上では、立っているのも困難なほど風が強いので、早々に退散して次に向かう。
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↑ 6:16 前岳山頂 |
↑ 6:28 東岳山頂 |
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荒川三山から赤石岳に向かうには、標高差400m余りを一旦降り、続いて500mを登り詰めて行くことになる。
中岳・前岳の稜線上から、南側の斜面に降りると、すぐに風は収まった。風の道というか地形の影響の大きさを肌で感じた瞬間
だった。稜線を外れて暫くは、ガレ場の急斜面が続く。滑落の恐れがあり、足の上げ下げにも油断できない。ここで強風が吹いて
いないのは幸運かも知れない。
200mほど高度が下がると潅木帯に入る。ここまで下ると歩行上の危険はなくなる。稜線から荒川小屋の区間で3組(5名)の
登山客とすれ違ったが、皆さん昨日の好天と比べての嘆き節を漏らす。
下りは順調にこなして、45分ほどで荒川小屋へ。ここで10分休憩。
赤石岳に向けての登りは、昨日の疲労が尾を引いてつらいものとなった。加えて、大聖寺平辺りからは強風がぶり返し、歩行の
辛さは感覚的には倍増した。通常でも登りは得意ではないが、更に余分な時間を費やして、やっとのことで小赤石岳に到着。
視界は10mから15mどまり。山の形もご本尊・赤石岳の方向も、さっぱり見当が付かない。
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↑ 9:14 小赤石岳山頂、ガスとレンズの結露で画像はボケボケ |
↑ 子赤石山頂付近で出会った雷鳥
4羽いたヒナはクモの子を散らすように茂みに消えた |
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強風に吹き倒されそうになりながら、稜線を辿って赤石岳を目指す。この稜線上で5羽の雷鳥の親子に出会ったが、
やはりこの地域の雷鳥は人間嫌いというか、用心深い。一切人を寄せ付けようとせず、クモの子を散らすように、ハイマツの藪に
潜られてしまった。
この頃になると、ガスは次第に粒子が大きくなり、霧雨模様になってきた。視覚でも皮膚感でも水滴を感じることはないが、メガネは
いくら拭いてもすぐに曇るし、頭髪には水滴が付いている。結局、メガネは役に立たないので、裸眼で歩くハメになった。
足元だけを見ながら、30分ほどかかって赤石岳の山頂に到着。
すぐに記録用の写真を、ということになったが、寒さで指はかじかむわ、ポケットから出すなりカメラのレンズは結露するわで、
画像は悲惨な出来栄えになっってしまった ^^;。
記念写真は、というともっと悲惨で、
写っているのが自分であることを認識するのも困難な状態である。
寒いし何も見えないし、ここに長居しても何も得るところはないので、早々と退散することにする。
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↑ 11:07 富士見平、赤石小屋方面への分岐 ここから東斜面に僅か30m下っただけで
強風は途絶えた |
↑ 12:03 赤石小屋. ここで20分ほど休憩
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↑ 季節外れのギンリョウソウの群落 (Clickで拡大) |
↑ 赤石岳への登山口に到着 |
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稜線を離れて、山塊の東斜面に取り付くと、ここでも強風はウソのように引いた。
ここから富士見平までは、ガレ場、岩場取り混ぜて、ややハードなアップダウウンのコースが続く。ヤキの回りかけた足腰には、
やや重荷のコースだが、この区間を乗り切りさえすれば、後は穏やかな尾根を辿るだけである。ただ、シラビソなどの針葉樹の
森の底を辿るこのコースでは、風景を楽しみながら・・・という向きには退屈極まりない時間に耐えなくてはならない。
途中、季節外れのギンリョウソウの群落に出会った以外はこれといった草花もなく、黙々と歩き続けて、2:40 無事椹島ロッジに到着。
畑薙ダムに下る送迎バスは、既に最終便が発車した後で、もう1晩ここで泊まらなくてはならない。
改めて思い返してみると、今回の悪沢・赤石縦走登山の間に、赤石岳の山容を直接自分の目で見ることは、一度もなかった。
『誰か、赤石岳ってどんな山か教えてくれ〜』と言いたい気分である。
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