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【1日目】高速艇で屋久島・安房港に着いたのが1:00少し前。鹿児島港で余裕がなかったので昼食をまだ
摂っていない。看板を頼りにレストランを探し飛び込む。ハードな山行に備え、少々脂っこいものをチョイス。これで明日からの淡白な食事を補うことにする。
この後、船内で流された旅行者マナービデオの指示に従い、食事後のゴミや汁一滴も持ち帰るために、ティッシュやウェットティッシュを
調達し、タクシー会社を捜す。猛暑の日中のことで、道を歩く人もなく、かなり無駄な徘徊もあったが、通りがかった小学生に場所を
教わり、どうにかタクシー会社に到着、小型車を手配して貰う。
親切で話上手な運転手さんから、いろいろ教わりながら淀川登山口を目指す。それによると、屋久島の低山域にはマムシはいるものの、
ハブやクマ、イノシシなど危険な生物はいないとのこと。数が多いのはシカとサルとのことだったが、2日間の行程中でサルを見かける
ことはなかった。窓外の道路脇には、大きく育ったマムシグサが多数目につく。
そうこうしているうちに淀川登山口に到着。ゆっくり身支度をしていると、後続の登山者が次々到着し、総勢6名に。皆さん今夜は
淀川小屋に泊まるという。入山届けを投函し、適当に示し合わせて、15:25登山口を出発。
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コースは屋久杉、樅などの針葉樹と、名前の判らない広葉樹の混成林を縫って進む。足の踏み場に困るほどの木の根の
ネットワーク
に気遣いながら、滑らぬよう躓かぬように注意しながら歩を進める。無風の林間は、むせ返るように暑い。
30mから50mの小さなアップダウンを数回こなすと、短い木道
が設えられた平坦地に出て、その向こうの森の切れ間に淀川小屋が見え始める。
所要時間25分余りの、初日のウォーキングは呆気なく終わる。
日没までにはかなり時間があるので、散策がてら小屋の周辺を見て回る。小屋の下を流れる淀川は、澄んだ水を湛えている。下流が何かで
堰き止められているのか、この付近は鏡のように静かな水面だ。この川に注ぐ、小さな沢の水が、この小屋での飲料水となる。『冷たい!』
というわけには行かないが、癖のない旨い水だった。
散策は適当に切り上げて、日の高いうちに夕食を済ませる。一緒に登って来た、青森から来たという熟年夫妻と雑談しながら、時間を潰し
ていると、7人目の客が到着した。今夜は合計7名がここの宿泊者である。
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【2日目】子午線に近い地域を生活の基盤にしている私・暇人の感覚では、当然のことながら日没も日の出
もかなり遅い。4時起きで行動開始を目論んでいたが、暗くて身動きもとれないので、30分ほど起床を遅らせることにした。
それでも食事の準備も食べるのも暗闇の中である。食事を済ませ装備を整えて、出発したのは4:50、まだ暗闇の中である。
小屋の脇の淀川に架かった橋を渡ると、いきなり高度差100mほどの急登が始まる。20分ほどすると、木々の隙間から望む上空は白み始めた
ものの、鬱蒼とした森の底まで照らすだけの力はない。ライトが要らなくなるのは、更に10数分後のことだった。
光が行き渡るようになると、屋久島特有の景色が眼前に広がってくる。前方に朝日を浴びて、赤く染まったカマボコの厚切りのような
奇岩が見える。樹林の切れ目に広がる物珍しい景観を楽しみながら歩を進め、1時間10分ほどで、
小花之江河に到着。パンフやWebなどの情報から想像していたもの
より、こじんまりした構えである。つい10日ほど前、台風が通過したばかりなのに、水量は意外に少ない。湿原の花々を期待して来たが、
残念ながら見事に何も見当たらない。
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更に20分ほど進むと花之江河に着く。先ほどよりかなり大きい構えだが、やはりここも水量は少なく、花の気配もない。気持ち疲れ気味
のコケの群落が広がるのみである。
この頃になると日差しは威力を増して来た。早めに日焼け止めを塗ることにした。
花之江河を後にして、次なる目標・投石平に向かう。この頃から次第に山肌の樹木は密度を下げ、代わって40〜50cm丈で細葉の笹が目立
つようになる。ここに来て、笹原に杉やシャクナゲが点在する尾根の向こうに、宮之浦岳が見え始める。
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笹原に切られたルートを辿り、黙々と宮之浦岳の山頂を目指す。前方の宮之浦岳は、次第に大きく聳えるようになり、その山腹の笹原に
刻まれた登山ルートが、クッキリと浮き上がるように見てとれる。
周囲に視界を妨げる高木がなくなり、四方の山並みや奇岩が目を楽しませてくれる。左の画像は、正式名は知らないが、私の勝手で
「屋久のモアイ」と呼ぶことにした奇岩である。
ほとんどの沢筋は、何のためらいもなく飲めそうな 清水
を湛えており、訪問者の喉を潤してくれる。水温は18℃前後で、「冷た〜」という訳には行かないが、亜熱帯のこの地で贅沢
は言えない。
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安房岳を巻くように一旦下り、高度差180mほどの最後の登りのコースに取り掛かる。今日歩いてきたコースの中では、1、2番のハード
な斜度だが、さほどの辛さを感じることもなく、8:40頂上に到着。
山頂には先着の登山者が2人休憩していた。これに加わってやや長めの休憩を取る。上空にも、島の周辺にも雲らしいものは見当たら
ない、すばらしい天気である。こんな日にここに来られたのは、幸運の極みかも知れない。
しばし休憩の後、周囲の景観をカメラに収める。隣の登山者にシャッターを頼み頼まれながら、登頂のアリバイを記録して、9:01次の
ポイント・新高塚小屋に向けて出発。
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山頂から永田岳への分岐・焼野までは高度差150mほど、下りではあるがこのルート中トップ級の急斜面である。足を滑らさないよう
慎重に歩を進め、15分ほどで焼野を通過。
この後、小さなアップダウンを順調にこなして平石を通過。この辺りから次第に背の高い樹木が増えて、森林に分け入る。
10時過ぎに 坊主岩 の脇を通過し第二展望台
到着。この時点で朝食から既に6時間近くが経過して、空腹感が頭をもたげ始めたため、昼食を兼ねて長めの休憩をとることにした。
25分ほど休憩の後、歩行を再開。森の底に切られたコースからは、周囲の景観は全く見渡すことはできない。日差しを遮ってくれる
代わりに、風が通らない樹林を大汗を掻きながら歩くこと凡そ1時間で 新高塚小屋 へ。
朝の淀川小屋出発の時点では、歩行ペースが上がらなければここで一泊するつもりだったが、11時を少し回った時点で着いてしまった。
予想外のハイペースであり、調子に乗って次の白谷山荘まで行くことにする。やや長めの休憩の後、次の縄文杉を目指して11:35出発。
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新高塚小屋から縄文杉までは、地形図の目測で1.6k余り、僅かにアップダウウンを繰り返しながら、高度差150mほどを下る。難しいコース
ではないが、無風+猛暑には相当なスタミナを消耗してしまった。
新高塚小屋から縄文杉までは、数頭のシカの他には、一人の登山者にも逢うことはなかった。1時間を少し切って縄文杉に到着。
ここから先は人出に関して、様相は一変する。
展望台の外れに荷物を置き、しばし休憩。その後、大勢のツアー客に混じって、大杉の見物と写真撮影にかかる。が、離れて見る大杉は
確かに大きいのだが、今一実感が伴わないところに物足りなさを感じてしまう。
ここで20分ほど過ごして、次を目指して出発。
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夫婦杉、
大王杉 を順調に辿って、下山路を下る。
ここでも沢筋の各所で、豊富に湧き出る清水に助けられた。縄文杉からちょうど1時間でウィルソン株に到着。
ここだけは朽ちかけてはいるが、手を触れたり、空洞化した株の中に入ることが許されている。その大きさが体感できる唯一の資源
でもある。因みに株の内部に入り、上空を仰ぎ見るとこんな風 に見える。
ここで20分ほど休憩の後、次の大株歩道入口を目指して出発。この後は、これといったエピソードもなく、15分ほどで歩道入口に到着。
ここで谷川の水で顔や手を冷やすなどして、15分ほど休憩して次の楠川別れに向け出発。
楠川別れまで3.5k余りは、軌道内の板張りの歩道を歩く。平坦な軌道上の遊歩道は、足の筋力への負荷は少なく、快適に距離を
稼いで1時間で楠川別れに到着。
ここで快適な遊歩道に別れを告げて、再び山道に戻る。ここから辻峠までの高度差は約250m、平常時ならどうということはないのだが、
今回はちょっと様子が違っていた。かなりの距離を歩いて来て、脚の筋力はヘロヘロになっている。どうにもこうにも足が前に
出ないのである。
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早めの昼食から既に6時間が経過していることを思い出し、慌てて緊急時用の補助食を腹に入れるも、都合よく急速には効いて
くれない。足腰の筋肉を騙し騙し、少し歩いてはかなり休む、というナマケモノ風尺取虫歩行を重ねて、何とか辻峠に到着。観光協会
発行のコースタイム1時間を大幅に上回って、1時間半近くかかってしまった。
辻峠から白谷山荘までの森は、"もののけ姫の森"と命名されたきれいな景観が紹介されているが、今日はそちらに振り向けるスタミナ
は残っていない。加えて、太陽はかなり傾いて、森の中は既に薄暗くなっている。写真撮影には何とも不向きな光量で、散策も撮影も
放棄して先を急ぐことにした。
登山路は、半ば水路化している。足を滑らせないよう用心しながら進む。現金なもので、コースが下りに変わった途端、歩行ペース
は平常時のペースに戻っていた。コースタイム通りの20分で白谷山荘に到着。
先着の宿泊者3人が夕食に取り掛かっていた。仲間に加わり、急いで夕食を準備する。先客は自分とは逆コースを辿るという山口から
の熟年カップルと、同県人の単独行男性。この人とは坊主岩辺りから前になり、後になりしながら併走してきたが、最後には大きく
水を開けられてしまった。今夜はこの人たちとこの小屋に同宿する。
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【3日目】山口からのご夫婦は暗いうちから行動を開始していたが、こちらは急ぐ用もないので横に
なったまま明るくなるのを待った。明かりなしでものが見える頃を見計らって起き上がると、先のご夫婦はスタンバイを終え、出発
する直前だった。行程の無事をと声をかけて2人見送り、ゆっくり自分の朝食を準備する。
小屋の近くに住み着いているらしいシカが出てきて、テーブルの周りをうろつく。人に馴れ切っていて、恐れる様子がない。
これは至近距離40cmまでカメラを近付けて
撮影したもので、ストロボを焚いても平然と草を食み続けた。
7時前になると、早立ちの登山者が小屋に到着し始めた。こうした登山客と雑談しながら装備を整え、6:50小屋を出発。
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10時間近くの睡眠と、腹一杯の夕食・朝食が効いて、スタミナは満タン状態を回復した。加えて、辿るコースは下り一辺倒で、トントン
拍子に駆け下り、飛龍落しの滝へ。
このまま登山口に直行すると、ただバスを待ち続けるだけなので少し寄り道をしたが、選んだコースが中途半端で、7:56には
白谷登山口に着いてしまった。
この後、約1時間をこの登山口付近でブラブラ過ごし、9:00発のバスで宮之浦港に戻った。3日間の、内容の濃いウォーキングだった。
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