水晶岳
2,986m (2006/09/02)
コースタイム:
山行記録
鷲羽岳
より続く
ワリモ北分岐(8:00) ─→ (8:41)水晶小屋(8:43) ─→ (9:18)水晶岳山頂(9:33) ─→ (10:05)水晶小屋 →
─→ (10:34)ワリモ北分岐(10:36) ─→ (10:43)岩苔乗越 ─→ (11:22)祖父岳(11:30) →
─→ (12:30)雲ノ平山荘(13:25) ─→ (16:45)薬師沢山荘(泊)
薬師沢山荘(6:10) ─→ (8:48)太郎平小屋(9:10) ─→ (9:48)五光岩ベンチ ─→ (11:35)登山口
※各ポイントの左時刻は到着時刻、右時刻は出発時刻を表す
同行者:
なし(単独行)
ワリモ北分岐から水晶岳までの高度差は200m弱、これをおよそ2km歩いて登り詰めて行く。尾根筋のなだらかなコースを快適な ペースで辿る。
右手の景色は、水晶小屋までは尾根に遮られて何も見えないが、左側には岩苔谷を挟んで、祖父岳とその後方に広々と雲ノ平が広がり、 いくつかの軌跡が延びている。昼過ぎにはこのなだらかに広がる丘陵のどこかを歩いているはずだが...。
高度が上がるにつれ、振り返って見る尾根には、これまで歩いて来た道筋がクッキリ浮かんで見える。尾根筋縦走の醍醐味を感じる 瞬間である。
行程の約半分、水晶小屋直下まで来た時、コース脇の草原でホシガラスが何かをついばんでいるところに出会った。距離は4〜5mほど、 登山者に気付いているのか、いないのか。少しずつ場所を変えながら、一心不乱についばんでいる。顔を上げた時、くちばしには 何やら赤い実が挟まっていた。食事の邪魔にならないよう、静かに脇を通り過ぎようと試みたが、この距離以内は彼らには我慢でき ないようで、飛び去ってしまった。
水晶小屋まで来ると右側の視界も大きく開けてくる。真砂岳や野口五郎岳に向けての縦走路が、ノコギリの歯の様な尾根の上を 走り、豆粒のような登山者がコースを辿っているのが見て取れる。
ここから先は、尾根筋のピークを辿るコースになり、右左の視界が大きく開ける。黒部源流部の大パノラマを満喫しながら進む。
頂上への最後の50m(高度差)は、急角度で立ち上がる岸壁の割れ目と凹凸にしがみつくような、ハードでスリリングな登攀になる。 4本の手足を総動員して狭い岸壁のコースに取り付くこと10分ほどで無事山頂に到着。
山頂の平坦部はさほど広くはない。10人ほどが限界か。サブバッグをおろし、先着の登山者に頼み頼まれる形で、登頂の記念写真の 撮影を済ませ、改めて山頂からのパノラマを楽しむ。東方向が逆光でやや見難い以外、視界を妨げるものは何もない。絶景だ。 ゆっくり時間をかけて風景の変化を楽しみたいところだが、後には大軍団が控えており、もたもたしていると大混雑に巻き込まれる。 そそくさと身支度をして、9:33下山開始。
下は、水晶岳山頂から見た 南東 →(時計回り)→ 南東 のパノラマ
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拡大
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下山開始が少し遅かったか。あと少しで難所も終了というところで、大軍団に遭遇してしまった。やむを得ず、コース脇の岩に掴り、 道を譲ってすれ違うことにしたが、何しろ人数が多い上に、険しいルートで行列がバラけているため時間がかかる。5、6分かかって やっと全員をやり過ごして、下山を再開。
山頂直下の険しい難所を終えたところで、別のパーティに遭遇(写真)。今度のパーティは20人ほどだ。山頂(中央のピーク)を 振り返ると、先ほどの大軍団がちょうど山頂に到着したところで、遠目でも混雑が見て取れる。このグループが到着したらどうなる んだろう。
それはそれとして、先は長い。下山を急ぐことにする。
高山帯の山頂付近では高山植物のシーズンはすっかり終わっており、暇人が足を止めて時間をつぶす用件は、今は全くない。この 団体とすれ違った後は、わき目も振らずに歩を進め、ザックを置き去りにしたワリモ北分岐まで戻った。ちょっと勿体なかったか。
祖父岳から望む水晶岳からワリモ北分岐の稜線
ワリモ北分岐から滑り易い急斜面を下って岩苔乗越へ。ここで左の黒部川源流、右の高天原から登ってくるコースと合流・交差する。 両方ともいつか歩いてみたいコースだが、今回は直進して祖父岳・雲ノ平に向かう。
ハイマツを掻き分けるように尾根筋を進む。右手には、つい先ほど登ってきた水晶岳が大きくそびえている。10分ほど進むとコース は緩やかに左に向きを変え、背を向けて歩くようになる。巻道、U字溝、ハシゴなど多彩な道を辿りながら祖父岳山頂へ。
広々とした山頂は、整地したかのように平坦である。先着の3人の登山者が談笑しながらくつろいでいた。漏れ聞こえてくる話を 要約すると、今日の好天と絶景に至って感動しておられる様子。確かにやや下から仰ぎ見る山々も悪くはない。が、"暇人"はあくまで そうした美しい山々のピークを目指して悪戦苦闘する道を選ぶ。
昼食にしても良さそうな時間だったが、先送りして10分弱の休憩の後、次の目標、雲ノ平に向け出発。
この祖父岳で今日の山越えは全て終わった。後はひたすら下りのコースを辿るだけだ。地図を見て気になるのは、薬師沢直前の400m 余りの急角度の下り坂だ。
祖父岳山頂から雲ノ平山荘までは、よく整備された道が続く。高度差で150mほど地道のコースを下ると、後はほとんど木道が敷設 されていて、非常に歩き易い。
雲ノ平山荘までの中程で、20代半ばの若い登山者に出会った。一見してかなりの消耗ぶりで、歩き方もヨレヨレだ。休憩がてら立ち 話を交わす。太郎平小屋を朝出て、薬師沢小屋を経由してここまで来たという。薬師沢からの急登でスタミナを使い果たしたとの ことで、この先二度と通りたくない難所の一つだとか。この話しぶりから想像すると、下りといえども手こずることになるかも。
先の予定を聞くと、水晶か鷲羽どちらかに上がって小屋に入りたいという。しかしこの疲労の様子では無理かと思い、ショートカット して三俣山荘に直接行くよう薦めて別れた。
その後、これというエピソードもなく木道を辿り、12:30雲ノ平山荘に到着。ここで昼食と大休止をとることにする。
1時間弱の休憩を取り、最後の難関の待ち受ける薬師沢に向け13:25出発。
雲ノ平山荘から下も、比較的平坦な丘陵部分のコースには全域に木道が敷設されている。湿原の風情が漂う一帯は、今は完全に 干上がっている。高山植物はほとんどが花の季節を過ぎ、種子の時期にさしかかって、華やかさはない。
木道から少し離れた、干上がった沢の傍にワタスゲの群落があった。ワタボウシをフワフワに広げて、旅立ちの風を待っている ようだ。うまく湿地に着地しろよ!。
1時間ほど歩くと、次第にコース周辺にシラビソが目立つようになり、やがて木道は終わる。いよいよ問題の急斜面だ。
コースは傾斜地入り、周囲はうっそうとした森林となる。先程の若者のボヤキ通り、半端ではない難コースだ。まず、積み重なった 石が大きいこと。ドラム缶サイズから小石サイズまで、大小取り混ぜて積み重なった中を縫って進む。石が大きい分、歩幅や段差 も大きくなり膝へのショックは大きい。この急な坂道を登るなどということは、先の若者だけではなく私だって"No Thank you"だ。
更に不思議なことに、積み重なった大石・小石のどれもが角が取れて丸みを帯びている。まるで急流の渓谷か荒磯から運んだかの ようだ。ここの石が、一体どんな経緯を辿ってこのような丸みを帯びたか、という点に興味は尽きないが、その前に、体を支えるため に石に掴ろうにも、手のひっかかりがないのが困る点だ。
昼前から感じ始めていたひざの違和感が、ここに来て痛みに変わってきた。昨日から今日にかけて、少し欲張って歩いたせいだろう。 下りの高度差400mなら普段は休憩なしで済ますところだが、ここでは3回も座り込んで休むハメになった。
この坂道で悪戦苦闘すること2時間余り、やっと沢の水音が聞こえて来た。これで苦行から開放される。歓喜の瞬間だった。
Z
・
Z
・Z・Z・z・z・・・ (9時間)
昨夜は畳2枚分のスペースで、9時間近く熟睡してしまった。この3日間、就寝スペースは少しずつ広くなったのはラッキーだった。 今日は距離こそ12kmあるものの、大きな登りはなくのんびりできる。と言っても、留まっていても何もすることがないので、薬師沢 小屋を6:10に出発。
小屋を出て少しだけ急な登りがあるが、それを過ぎるとコースは緩やかなクマザサの茂る木道になる。ところどころ池塘ののように なったところが見受けられるが、ササの繁茂で消滅しかけている。しばらく歩くとササ原がとぎれ、草地に変わる。低地や沢筋には 水が溢れ、湿原の趣を呈している。昨日の雲ノ平とは水事情は大違いだ。サラシナショウマ、
トリカブト
などの夏の花と、
リンドウ
など秋の花が混在して、先を急がない通行人を 和ましてくれる。
こうしてノンビリ、ウットリ(?)山野草を楽しみながら湿原や沢沿いのコースを抜け、今回の登山では最後の登りに差し掛かる。 太郎平小屋までの高度差250mほどを、約1時間かけてゆっくり辿り、8:48小屋に到着。ここで20分余り休憩をとる。
昨日に続き、今日も文句の付けようのない遠望である。一昨日、見えなかった分を取り返すように眺めを楽しんで、小屋を後にする。 まだ時間が早いこともあって下山者は殆どいない。長いアプローチを黙々と歩き、太郎平小屋が見えなくなる直前で見納めの1枚を 撮影(写真)。この先このコースに足を踏み入れることがあるかどうか....
五光岩ベンチ辺りまで下った頃から、すれ違う登山者も多くなった。おそらく折立で夜を明かし、早朝出発した人達だろう。日曜にも かかわらず結構登山者は多い。
三角点(1870m)まで下ると更に人並みは増える。この人たちは朝ゲートが開くのを待って、登って来た人たちだろう。20名近い 登り客に混じって、10分ほどの小休止をとる。
この頃から次第にガスが濃くなり始め、視界を遮られることが多くなった。ここから下は林間のやや険しい道になる。先程の三角点 の標識に記載された距離指標(折立まで3.8km、太郎平小屋まで4.2km)によると、この辺が折立までのほぼ中間点に当たるが、体感的 にはもっと近く感じられなくもない。55分ほどで折立登山口到着。
長い山歩きだったが、何とか足腰は耐えてくれた。
この後5分ほど経って、黒部縦走登山は悲惨な結末を迎えることになる。
駐車場に戻り、車のキーレスエントリーを操作するも反応がない。少し不安になりながらも、キー側の電池切れであることを祈り つつ、手動で始動を試みるが何の反応もない。
あ〜、やっちゃった。しかも選りに選ってこんな山の中で.......
原因はルームランプの消し忘れだった。そういえば下のゲートで暗いうちに朝食を食べたワナ〜。
原因が分かったからどうなるというわけではない。この後1時間余り、人様の手を煩わせながら悪戦苦闘するはめになった。詳細な 経過は省くが、有峰林道・折立ゲート監視員のYさんと、たまたま休日でキノコ狩りに来たという、Yさんのお友達のご好意でエンジン は始動でき、無事帰宅することができた。私的な場ではあるが、ここで改めてお二方に感謝の気持ちを表したい。